■コロナ患者の約6割に嗅覚・味覚障害あり■
先日、世田谷区から発表されたアンケート調査では、コロナ感染者の48%に後遺症が認められているということでした。(朝日新聞2021.9)また、その後遺症の症状別で最も多かったのが、嗅覚障害で、その次に全身倦怠感、味覚障害と続いていました。アンケートに回答した3710人のうち、嗅覚障害の後遺症は971人にみられたようです。金沢医科大学の三輪教授による2021年2~5月のアンケート調査でも、新型コロナウイルス感染症の約6割が嗅覚、味覚障害を自覚していました。発症して1ヶ月後までの改善率は、嗅覚障害が60%、味覚障害が84%であり、海外からの報告でも1ヶ月で嗅覚障害は60~80%は自然軽快するとされています(厚生労働科学特別研究)
嗅覚・味覚障害は、コロナ発症して1ヶ月経過しても改善しないときは、受診して検査・治療を開始したいところです。
■耳鼻咽喉科での診察■
耳鼻咽喉科のクリニックでは、まず、鼻の中を観察して、嗅覚障害を引き起こす異常がないか探します。鼻の粘膜が腫れたり、鼻水が多いことで鼻がつまってにおいが弱くなることもあります。ここで、鼻咽腔ファイバースコープ検査(鼻内視鏡)で鼻の奥までチェックします。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎があればその治療が必要になります。見かけで明らかな異常がない場合、新型コロナウイルスによる神経障害の可能性が高くなります。総合病院・大学病院などの高度医療機関では、その他、嗅覚検査(基準嗅覚検査、静脈性嗅覚検査)、血液検査、CT等の画像検査などをする場合もあります。
■内服治療■
現在のところ、新型コロナウイルスによる嗅覚障害に対する効果がはっきりしている薬物治療はありません。しかし、これと同じような病気と考えられる「感冒後嗅覚障害」の治療を、コロナ後の嗅覚障害に対しても行われています。感冒後嗅覚障害とは、風邪のあとににおいがしなくなることです。風邪の原因となったウイルスにより嗅神経が炎症をおこし、におがわからなくなることです。これに対しては、ステロイド点鼻、漢方薬、ビタミンB12などが効果があるとされます。
■嗅覚リハビリテーション■
アロマオイルや、コーヒー、お茶などの匂いを1日2回朝晩、30秒ほど嗅ぐというものです。これは、コロナウイルス後の嗅覚障害に対して、効果があるとされています。その匂いをイメージしながら嗅ぐことで嗅神経の再生を促します。アロマオイルは、ラベンダー、レモン、ユーカリなど色々な種類のものがありますが、お好きなものを選べばよいと思います。用意するのが難しい場合は、コーヒーや、味噌汁、家のお食事でやるのがよいでしょう。
■味覚障害■
実際に味覚障害が生じているのか、嗅覚障害があるために味がよわくかんじる、風味障害であるのかは議論の分かれるところです。現時点では、亜鉛補充療法が一定の効果があると考えられております。
コロナ後に嗅覚、味覚障害が長引くようでしたら、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
クリニックによっては、コロナ後の嗅覚、味覚障害の診療をしていないところもありますので、受診前に確認していただければと思います。
給田耳鼻咽喉科クリニック