2020年のスギ花粉症シーズンより、重症花粉症患者さんに対する新たな治療が開始されます。重症喘息に対して使用されてきたオマリズマブ(ゾレア®)が季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)に対して新たに保険治療の対象になりました。従来より行われてきた内服治療、点鼻治療、レーザー治療、免疫アレルゲン療法(舌下療法)などの効果に乏しい重症花粉症患者さんのみが行える治療です。非常に効果ある治療ではありますが、非常に高価な治療であり、使用基準が設けられておりますので、すべての患者さんが行えるものではありません。
◆ゾレアは花粉のIgEと結合し、IgEがマスト細胞と結合できなくすることで、アレルギー反応をその元から抑えます。従来の薬物治療(内服薬やステロイド薬)と比較し、アレルギー反応をより上流でブロックする治療です。
◆対象となる患者さん(かなり条件が厳しくなっています)
スギ花粉症の重症または最重症
過去に医療機関で鼻噴霧用ステロイド薬及び内服薬による治療を受けたが、効果が乏しい
スギ花粉抗原に対する特異的IgE抗体がクラス3以上
血液中の総IgE値が30~1,500 IU/mlの範囲
12歳以上で、体重が20~150kgの範囲
◆投与方法
月1~2回、上腕などの皮下に注射します。投与量、頻度は体重・血液検査の結果(総IgE値)により患者さんごとに決定します。花粉の飛散時期に3か月程度行います。内服なども併用して使用します。
◆副作用 注射部位の赤み、腫れ。頻度は低いですが、呼吸困難や血圧低下などのアナフィラキシー。
◆実際の投与スケジュール(投与開始まで4回の来院が必要です)
1回目来院:診察(昨年の治療薬の詳細や症状を確認して、重症かどうかを判定します)薬物治療を開始します
2回目来院:1週間以上内服していただき、症状が改善しない場合に、血液検査(総IgEとスギのclass測定)をします
3回目来院:血液検査の結果により、投与量・投与間隔が決まります。ゾレア投与の日程を予約します
4回目来院:実際の投与開始です
◆値段 子ども医療助成が利用できます(本治療の適応は12歳以上です)。3割負担の方は、ゾレアの薬代が月3万円ほどになる場合が多いです。体重や血液検査の結果では、3割負担で月5~10万円になるケースもあります。投与前に値段をお伝えし、了承を得たうえで実際の投与日を予約します。この時点で中止されてもかまいませんが、高額薬のため予約をとってからの中止は行っておりません。また、高額医療費制度に関しては、加入の保険者に直接お問い合わせください。